2020.11.10更新

相続税対策(地主編Ⅰ・Ⅱ)において、資産管理会社を解説してきました。

 

しかしここまでの話は新規で設立する前提の話です。

既に資産管理会社を設立済みで、個人オーナーがその資産管理会社の株を持っている状態の場合は

どのようにすればよいのでしょうか?

 

この場合は不動産の承継の前に、自社株式の対策を行うことになります。

 

法人保険の活用や役員給与の引き上げ、不良債権の処理、遊休土地の活用などにより自社株式の

評価額を引き下げ、その自社株式を次の世代に贈与することで資産管理会社の「所有者」を

変更することとなります。

評価額の引き下げは組織再編や株式分割なども活用することができます。

 

もし対策を講じようとする方が60歳である場合には平均余命※1をベースとした場合、

男性約24年、女性約29年(令和元年分簡易生命表より)となっており、

また、平均的な健康寿命※2は男女ともに75歳前後となっており、時間として

15年ほどは残されている状態となります。

 ※1平均余命…ある年齢の人々があと何年生きられるかという期待値のこと。

        ちなみに、平均寿命とは0歳の人の平均余命のこと。

 ※2健康寿命…判断能力や身体の自由について健康的な生活が出来る寿命のこと。

 

この場合の対策例としては、以下のようになります。

<例1> 相続時精算課税制度の適用を受ける場合

 暦年贈与により少しずつ株式を承継し、退職時の退職金で下落した株価で

 相続時精算課税制度(コラム「贈与の種類」参照)の適用を受けることにより、

 低い株価で株の評価額を固定して承継を終えることができます。

 

<例2> 相続時精算課税制度の適用を受けない場合

 株式分割により1株当たりの評価額を下落させ、長期的な贈与で承継する方法もあります。

 

また、個人オーナーがまだ収益物件を持っている場合には、贈与している期間で

売買してしまうと法人の利益が増加する危険性があるため、できるだけ承継期間の後半もしくは

承継後に収益物件を法人に移転することが望ましい場合もあります。

 

というのも、どれだけ収益物件から所得が出ているか、株価がいくらなのか、

節税額がどうなるのかなどを総合的に判断したうえで対策を講ずる必要があるからです。

 

「必要に応じて必要な対策を講ずる」ことが節税への第一歩となります。

 

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投稿者: 中田聡公認会計士事務所

2020.11.05更新

前回のコラム相続税対策(地主編Ⅰ)では、資産管理会社の設立を行うことで長期的な相続税対策及び

納税資金対策を行うことができるとお伝えしました。

 

その資産管理会社には実は以下の3種類の形態があり、どの形態で活用するかということも検討が

必要となります。

(1)管理料徴収方式

(2)転貸方式

(3)不動産所有方式

 

前回お伝えしたのは、(3)不動産所有方式による節税です。

(1)~(3)のそれぞれのメリット・デメリットは次の通りとなります。

 

(1)管理料徴収方式

    オーナーは個人のままで、資産管理会社は物件の管理(清掃、見回り、集金代行等)を行う

    方式です。

メリット

①管理業務の導入が簡単
管理料徴収方式の場合は不動産オーナーが法人に管理業務を委託するのみであるため、入居者との契約は個人オーナー名義のままであり、契約書の書き換えが不要です。 居住者の負担は集金業務を管理会社が行う場合の入金口座の変更のみとなります。

②不動産の移転コストがかからない
不動産の所有者はあくまで個人オーナーであり、不動産の所有権は移転しないため、登記費用や不動産取得税などの移転コストは発生いたしません。

デメリット

①所得分散効果が限定的
管理料として資産管理会社に移転できる収益が不相当に高額な場合、所得税法第157条「同族会社等の行為又は計算の否認」の規定により、経費として認められない事例もあり、所得分散効果は他の方式と比較すると限定されます。

②管理契約に基づく作業日報等の書類作成負担の発生
資産管理会社として税務当局(税務署、国税庁)に認められるには、資産管理会社が実態として業務を行っていることが不可欠です。そのため、物件の見回りや清掃等の頻度・内容を明確にするために管理契約に基づく作業日報等を作成し、保管しておくことが重要です。

 

 

 

 

(2)転貸方式

    サブリース方式とも呼ばれる方法で、巷で話題の「35年一括借上げ」のようなものです。

    個人オーナー所有の物件を資産管理会社に一括で貸し付ける方式で、会社は個人オーナーに

    借上げ家賃を支払い、一方で借上げた物件について入居者を募集し、家賃収入を得ます。

    入居者からの家賃収入と個人オーナーに支払う借上げ家賃との差額が資産管理会社の収益

    となります。

メリット

①管理料徴収方式よりも所得分散効果が大きい
管理料徴収方式の場合、管理料は賃料の3~7%が相場であり、多くても10%程度に抑えなければ税務当局に否認されかねません。しかし、転貸方式であれば借上げ家賃は通常家賃の80~90%となり、通常家賃との差(20%~10%)を資産管理会社の収入とすることができます。なお、こちらも借上げ家賃を通常家賃の60%にするなど、場合によっては税務当局から否認される可能性もありますので、注意が必要です。

②不動産の移転コストがかからない
不動産の所有者はあくまで個人オーナーであり、不動産の所有権は移転しないため、登記費用や不動産取得税などの移転コストは発生いたしません。

③相続発生時には入居者との契約書の書き換えが不要
賃貸借契約は入居者と会社の間で交わされるため、個人オーナーに相続が発生した場合においても、契約書を相続人名義に変更する必要はありません。※資産管理会社と個人オーナーの間では契約書の書き換えは必要です。

④相続区発生時の評価額の圧縮
転貸方式による一括借り上げは、、個人オーナーと資産管理会社との間での貸付となり、個人オーナーに相続が発生した場合には賃貸割合が100%となるため、相続税評価額の圧縮につながります。

デメリット

①空室率が高いと会社の収支が回らない
資産管理会社にとっては空室率が低ければ多くの収入を得ることが出来ますが、逆に空室率が高い場合には借上げ家賃が家賃収入を上回ってしまい、資産管理会社のキャッシュフローが悪化し、支払い不能となってしまう恐れがあります。

②一括借り上げ時の入居者との間での手続きが煩雑
入居者との契約は資産管理会社が行うこととなるため、個人オーナー名義で賃貸借契約書を作成している場合には変更する必要があります。また、家賃の入金口座も変更となります。

 

 

(3)不動産所有方式

    資産管理会社が不動産を取得し、管理運営を行う方式です。

メリット

①所得分散効果が大きい
資産管理会社が建物を保有する為、家賃収入は100%資産管理会社のものとなります。個人は地代収入が残るのみであるため、大幅な所得圧縮を図ることが出来ます。

②納税資金の確保を図ることが可能
資産管理会社に不動産を移転する際には主な移転方法として売買が利用されます。時価や時価に近い価額での譲渡となるため、売買代金も高額になりがちです。そのため、その売買代金をもって、相続税の納税資金とすることが可能です。

デメリット

①不動産の移転に関する諸費用が発生する。
資産管理会社が賃貸不動産を所有することになるため、不動産の所有権移転に関して登記費用と不動産取得税の負担が発生します。また、簿価を超える金額で売買することとなった場合には譲渡税も発生します。

②入居者との間での手続きが煩雑
入居者との契約は資産管理会社が行うこととなるため、個人オーナーとの契約から、会社との契約に変更する必要があります。また、家賃の入金口座も変更となります。

 

 

このように、それぞれメリット・デメリットがありますが、節税額と手間を考えて実行する

対策を選択することが大切です。

節税効果が最も高いのは不動産所有方式ですが、その分の手間や費用も発生します。

最初からどれかを選択するのではなく、余裕資金を考えて段階的に実施するという選択肢も

あります。

 

どのように活用していくか迷われた場合にはぜひ大阪相続税サポートセンターに

ご相談ください。

 

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投稿者: 中田聡公認会計士事務所

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