2020.12.23更新

 

令和2年(2020年)4月1日以後に開始した相続については、配偶者居住権の設定が行えることとなりました。
そこで、配偶者居住権について簡単にご説明いたします。
今後の配偶者の生活の保護や相続税の観点からも重要な論点になるものと思います。

1、概要
(1)配偶者居住権とは
そもそも配偶者居住権とは、残された配偶者が被相続人の所有する建物(夫婦で共有する建物でも可)に居住していた場合に一定の条件を満たすことで、被相続人の死亡後も配偶者が賃料の負担なくその建物に住み続けることが出来る権利です。

(2)配偶者居住権を取得する条件
①亡くなった人の配偶者であること
②その配偶者が被相続人が所有していた建物に相続開始時に居住していたこと
③遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判により取得したこと

(3)権利が存続する期間
配偶者居住権は遺言や遺産分割により終身又は一定期間といして、自由に設定することが出来ます。

 

2、相続開始前に行う対策
(1)共有持ち分の整理
配偶者居住権は、被相続人が被相続人の配偶者以外の者と共有していた建物については配偶者居住権の成立は認められません。そのため、配偶者居住権を設定したい場合には、生前に配偶者以外の者との共有関係を解消しなければなりません。これは、配偶者以外の者の持分に係る利益が配偶者居住権の設定により不当に侵害されることを防ぐための制度です。

(2)遺言による遺贈

配偶者居住権は遺産分割協議の他、遺言による取得も可能です。
被相続人が遺言書に、配偶者に対し「配偶者居住権を遺贈する」旨の遺言を遺すことにより、配偶者居住権を取得させることが可能です。
なお、配偶者居住権については、民法上の規定において「配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき」に取得すると規定されています。
そのため、遺言者には配偶者に「遺贈する」と記載することについて留意する必要があります。
※遺言には「相続させる」遺言と「遺贈する」遺言が存在します。これらの違いについてはこちらの記事にてご紹介しています。

 

3、配偶者居住権に係る権利義務
(1)遺産分割協議
配偶者居住権の設定を行う際、その評価方法により財産取得の比率が変動するため、具体的相続分に影響が生じます。
そこで、配偶者居住権の評価は主に3通りの方法が利用されます。
①不動産鑑定による鑑定価額
②協議による遺産分割の場合は法務省が公表している簡易な評価方法
③相続税における配偶者居住権の価額の評価方法
具体的な評価については、当サポートセンターまでお問い合わせください。

(2)修繕費や固定資産税などの必要費
配偶者居住権が設定されている建物やその建物の敷地などの修繕費や固定資産税は配偶者が負担することとなります。
なお、配偶者が負担すべき必要費は「通常の必要費」と呼ばれるものです。詳細についてはこちらをご参照ください。
※財務省 物納等不動産に関する事務取扱要領について より抜粋
なお、固定資産税は納税義務者は固定資産の所有者と規定されていることから、納付書等は所有者宛てに送られてきます。これを納付した場合、配偶者に対し求償できるものと解されております。

相続税はもちろん、配偶者居住権等の取り扱いについてもお気軽にご相談ください。

◆大阪市で相続税の申告・相続税対策なら大阪相続税サポートセンター

 

投稿者: 中田聡公認会計士事務所

2020.12.18更新

弊所では、下記日程の間、年末年始休暇となります。

期間中は皆さまにはご不便ご迷惑をおかけいたしますが、

ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。

 

■年末年始休暇期間

 令和2年12月29日(火)~令和3年1月3日(日)

 

どうぞよろしくお願いいたします。

投稿者: 中田聡公認会計士事務所

2020.12.08更新

金融資産家の方々は資金が豊富にあり、納税資金に困ることはあまり多くないと思います。
むしろ、現金を贈与により下の世代に異動することが必要と言えるでしょう。

そこで活用したい贈与税の特例が3つあります。
①住宅取得等資金に係る贈与税の特例
②教育資金に係る贈与税の特例
③結婚子育て資金に係る贈与税の特例
です。これらの特例は、要件を満たせば一定の金額までは贈与税を非課税とする制度です。

それぞれの要件と非課税となる金額は次の通りです。

<特例> 住宅取得等資金に係る贈与税の特例
<贈与期間> 令和3年12月31日まで
<受贈者の要件> ①贈与をした人の直系卑属(子、孫等)であること
②贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること
③贈与を受けた年の年分に係る合計所得金額が2,000万円以下であること。
④自己の親族等から取得等するものでないこと。
⑤贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を住宅用家屋の取得等に充てること
⑥贈与税の居住無制限納税義務者又は非居住無制限納税義務者に該当すること

⑦贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくなの家屋に居住することが確実であると見込まれること。

<非課税限度額> 住宅用家屋の取得等に係る
契約の締結日
省エネ等住宅   左記以外の住宅   
H31.4.1~R2.3.31 3,000万円 2,500万円
R2.4.1~R3.3.31 1,500万円 1,000万円
R3.4.1~R3.12.31 1,200万円 700万円

 

<特例> 教育資金の一括贈与に係る贈与税の特例
<贈与期間> 令和3年3月31日まで
<受贈者の要件>           ①贈与をした人の直系卑属(子、孫等)であること
②贈与を受ける人が30歳未満であること
③金融機関等との一定の契約に基づくこと
④取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出すること
⑤贈与を受ける年の前年の合計所得金額が1,000万円以下であること
<贈与者が死亡した場合> 死亡日における非課税制度の適用を受ける金額として非課税申告書に記載した金額から実際に支出した金額を控除した残額のうち、死亡日前3年以内に取得したものについては相続又は遺贈により取得したものとして取り扱う。
<受贈者が30歳に到達した場合> 非課税制度の適用を受ける金額として非課税申告書に記載した金額から実際に支出した金額を控除した残額を贈与により取得したものとして取り扱う。
<非課税限度額> 学校等への支払い 学校等以外への支払い 最大
1,500万円 500万円 1,500万円

 

 

<特例> 結婚子育て資金に係る贈与税の特例
<贈与期間> 令和3年3月31日まで
<受贈者の要件>           ①贈与をした人の直系卑属(子、孫等)であること
②20歳以上50歳未満であること
③金融機関等との一定の契約に基づくこと
④取扱金融機関の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税申告書を提出すること
⑤贈与を受ける年の前年の合計所得金額が1,000万円以下であること
<贈与者が死亡した場合> 死亡日における非課税制度の適用を受ける金額として非課税申告書に記載した金額から実際に支出した金額を控除した残額については相続又は遺贈により取得したものとして取り扱う。
<受贈者が50歳に到達した場合> 非課税制度の適用を受ける金額として非課税申告書に記載した金額から実際に支出した金額を控除した残額を贈与により取得したものとして取り扱う。
<非課税限度額> 子育てへの支出 結婚への支出 最大
1,000万円 300万円 1,000万円

 

これらを組み合わせて利用することで直系卑属に必要な資金を渡すと同時に自身の相続税対策を行うことも可能となります。
これらの制度は一定の金額を非課税とするものであるため、例えば住宅取得等資金を1,500万円、通常の贈与を110万円行ったとしても贈与税は発生しないということになります。
適切な贈与で子供たちにも喜ばれる相続対策を実行していきたいですね。

生前対策のご相談は大阪相続税サポートセンターまでお気軽にご連絡下さい。

 

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投稿者: 中田聡公認会計士事務所

2020.12.04更新

前回まで地主様の相続税対策をご紹介してきました。

次は金融資産家(預貯金、上場有価証券、投資信託等を多額に保有されている方)の相続税対策についてご紹介いたします。

金融資産家の方は地主の方と違い、現金化しやすい資産を多く保有していることに特徴があります。
つまり、地主の方が陥りやすい「納税資金不足」という事態に陥りにくい傾向にあります。
相続した株式等を売却し、納税資金の捻出が可能です。
そのため、相続税対策を行う際に納税資金を常に確保した状態で可能な対策を行うこととなります。
金融資産家の相続税対策として一番簡単なものは暦年贈与です。
親族等に毎年110万円ずつ贈与すれば無税で財産の移転が可能となります。

しかし、多額の資産を運用している金融資産家の場合、この対策だけでは節税効果が追い付かず、結局多額の相続税が発生するということもあります。

そこで検討するのは
①マンション、アパートなどの不動産の購入
②贈与税を発生させる贈与
③贈与税の非課税の特例を利用した贈与
の3つとなります。
②は相続税がどれだけかかるのか、相続財産に対する相続税の割合は何%なのか、ということを試算してから、贈与税が贈与財産に対する相続税の割合を下回るよう贈与を行うこととなります。

相続財産1億円 相続税2,000万円 ∴割合20%
贈与財産700円 贈与税112万円 ∴割合16%

相続財産が1億円であれば、相続財産に対する相続税の割合は20%です。
そのため、700万円の贈与であれば贈与財産に対する贈与税の割合が16%となるため、子の贈与は相続税対策には有効であるという判断になります。

③は住宅取得等資金の一括贈与、結婚子育て資金の一括贈与、教育資金の一括贈与などの各種特例を用いた方法です。詳しくは別記事にて説明致します。

さて、本命となるのは①の不動産の購入です。
不動産の相続税評価額は時価の7割~8割程度と言われています。
この差額を利用したものが不動産の購入です。
例えば、時価2億円の不動産を購入したとします。
この不動産の相続税評価額が1.5億円だとすると、財産の評価額にして約5,000万円の差額が発生します。
もし相続財産がこの金融資産又は不動産のみとした場合、相続税にすると、配偶者+子2人の場合
①2億円の金融資産の場合の相続税納付額:1,670万円
②1.5億円の不動産の場合の相続税納付額:920万円
①と②の差額は750万円となります。
金融資産を不動産に換えるのみで、これだけの節税効果が発揮されます。

しかし、このマンションの値下がりリスク等も発生します。
もし2億円のマンションを購入して750万円節税できても、値下がりで1.8億円になってしまうと節税効果を上回る損失が発生します。
そのため、購入する不動産は専門家に相談することが大切です。

大阪相続税サポートセンターでは不動産会社とも連携し、しっかりとご相談者様のサポートを行っております。
お気軽にご相談ください。

 

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投稿者: 中田聡公認会計士事務所

2020.12.02更新

前回までで地主様の相続税対策については資産管理会社が有効である旨をお伝えしてきました。

今回は実際に資産管理会社を設立し、大幅な節税に成功した事例をご紹介いたします。
※プライバシー保護の観点より、個人名は伏せております。

資産管理会社の区分:不動産所有方式

【ご相談者様】X様ご夫妻
・夫婦で持分1/2ずつ所有。
 夫婦の財産合計は下表の通りでした。

資産内容 金額 債務等 金額
①土地 45,000万円 ①銀行借入金 13,000万円

②建物

10,000万円    
③現預金 5,000万円    
④その他の財産 2,000万円    

財産の状況及び不動産所得の状況より、不動産管理会社の設立が効果的ではないかと考え、シミュレーションをご提案しました。

①現時点で相続が発生した場合の相続税、②不動産管理会社を設立した場合の相続税の二つを簡易的に計算しました。

試算結果 現状 不動産管理会社設立時点 差額
1次相続 1,750万円 1,906万円 △156万円
2次相続 7,744万円 8,443万円 △699万円
合計 9,494万円 10,349万円 △855万円

※2次相続計算上は1次相続における法定相続分の財産を取得したものとして計算。(以下の税額シミュレーションにおいて同じ)

建物は会社に対して簿価で売却することとなるため、建物の相続税評価額より売却時の現金が高くなります。そのため、会社を設立すると売却時点では、少し相続税額が上昇してしまっています。

そのため、売却時点のみを見ると節税効果はないように思えます。
しかし、時間が経つにつれて節税効果は大きくなります。
例として、現状の所得等が永続することを前提として10年後の相続税をシミュレーションしてみると、下記の通りとなります。

  現状維持の場合 会社設立の場合 差額
1次相続 2,676万円 2,131万円 545万円
2次相続 11,524万円 9,343万円 2,181万円
合計 14,200万円 11,474万円 2,726万円

生活の変化等を考慮しないため、机上の空論ではありますが、10年後には対策の有無で1次相続、2次相続合わせて2,700万円も相続税に差額が発生していることが分かります。

これが資産管理会社の設立による不動産の流動資産化、所得分散の効果です。
この効果をX様ご夫妻にご説明させていただき、資産管理会社を設立することとなりました。
なお、売買資金は銀行に経緯やスキーム、キャッシュフローの見積もりを行うことでご納得いただき、早々にご融資頂くことに成功しました。


このように、資産管理会社の設立による所得分散は所得税の対策だけでなく、相続税の対策にも有効であります。

売買を行うにあたり、キャッシュフローが回るか否かなどのシミュレーションも行い、緻密な計画を行うことで銀行も快く売買資金を法人に融資してくださいました。


今回の対策では現時点では設立までを行いました。
今後ヒアリング、モニタリングを継続し、現金の贈与等を行う予定です。

また、資産管理会社への売却を通じて資産を現金化することに成功したため、これにより遺産の分割についても、お話をかなり進めやすくなりました。
親族間でもお話合い頂き、資産管理会社に出資した長女A様は若干少なく、他のお子様にはそれぞれ希望通りの割合でおおむね合意に至っています。

大阪相続税サポートセンターでは、相続税の節税だけでなく、遺産分割協議や後見制度、信託制度などを他の士業とも連携してサポートしております。

お悩みがございましたらお気軽にご連絡ください。

 

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投稿者: 中田聡公認会計士事務所

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